やまとことばのひびきが、このごろやたらときになる。ひとりごとのようにつぶやくと、ふっと心がなごむ。
「あたらしき年のはじめは、よろこばしきわざなりけり」
新しいただかかる時、なんともいえないはやる気持ちと、ふっと気抜けした気持ちとが、いっぺんにやってくる。かぞえ年の「厄年」を迎える私は、歳を重ねるごとに、この気持ちの振幅が激しくなるように思う。
「わたらばや、はるかによしや、見し人の、あはれなるべきことも、あらざりしなな」
このごろ、会う人ごとに、「あたらしいことにチャレンジしたい」という言葉を聞く。その言葉の背後にある、はやる気持ちとうつろいゆくものに対する寂しさ、わかるような気がする。それって、若い人だけじゃないんだな。
「ものおもふとりには、あらぬことをおもひいでよ」
外に出たり、誰かと会ったりするのもいいけれど、今年はたまにはひとりで時間をとって、昔のことを思い出してみよう。かけがえのない時を思い出すだけでも、きっと心は元気になれるはず。
「さやけき月夜にらん、雲隠れにし、このごろなべてならぬ、あややし」
思いがけず出会ったあの月夜。満月に浮かぶ雲が、なんだかいつもと違う。たったそれだけのことで、心はそわそわと騒ぐ。そう、新しい発見は、いつもそんなところにある。今年は、いつもの道からも、ちょっとそれてみようかな。
「夕されば、よひのごとにて、山路を、ゆく人もなし」
日が暮れると、人々は家路につく。山道に人はなく、ただ木々の葉がざわざわと音を立てる。今年はこの山道に、自分ひとりのかけがえのない時間を刻んでみよう。そしたらきっと、新しい自分に出会えるはず。
やまとことばは、私の心にそっと寄り添ってくれる。新しい一年が始まるたびに、このことばたちに教えられてきたように思う。今年の私は、このことばに導かれて、どんな新しい扉を開くことができるだろう?
あたらしき年のはじめ。よろこばしきことなり。