ゆず、新たな一面と普遍性を追求した15枚目のフルアルバム




「ゆず、またもや挑戦状を叩きつけてきたな〜」──。15枚目のフルアルバム『PEOPLE』を聴き終えた瞬間、そんな感想が脳裏に浮かんだ。
ゆずといえば、これまでも「青」「夏」「風」といった普遍的なテーマを歌い、幅広い世代から愛されてきた。“超絶ハッピーソング”“爽快ソング”といったイメージが強い彼らが、今回はどんなアルバムを作り上げたのか。

“普遍性の追求”をテーマに

『PEOPLE』で彼らが新たに挑戦したのは、“普遍性の追求”だ。アルバムのタイトルにもあるように、このアルバムには“人”がキーワードとして流れている。日常の何気ない瞬間を紡ぎ出すことで、誰もが共感できる普遍性を表現した。
たとえば、「カナリア」という曲は、仲間に囲まれ、自分らしく生きることを歌った一曲。また、「アドレナリン」は、挑戦する気持ちや、これまで歩んできた道に対する感謝を込めた曲になっている。

新たな一面も垣間見える

普遍性を追求する一方で、このアルバムではゆずの新たな一面も垣間見える。
「からっぽ」は、失恋の苦しみをストレートに歌ったバラード。これまであまり見せてこなかった、彼らの繊細な感情表現が印象的だ。また、「マスカラ」では、女性目線の歌詞に挑戦。切ない片思いの心情が、女性の視点からリアルに描かれている。

時代を反映した一曲も

このアルバムには、時代を反映した一曲も収録されている。それが「シシカバブー feat. クラムボン」だ。新型コロナウイルスの影響で、人々が集まることが難しくなった状況を歌っている。
“シシカバブーってなんだ?”と思っていたが、調べてみると「串焼き」のことらしい。キャンプファイヤーの“火”を“串焼き”に例えて、人々が集まる場所として表現しているのだ。新型コロナウイルスによって世界が分断されてしまった今の状況を、ユーモアを交えて歌っている。

聴き終えて

『PEOPLE』を聴き終えて、ゆずの音楽がさらに深みと広がりを増したと感じた。普遍的なテーマを歌いながらも、彼らならではの個性が随所に見受けられる。聴く人によって、さまざまな解釈ができるアルバムになっている。
ラストを飾る「イロトリドリ」が、このアルバムを象徴しているように思う。“人それぞれの色がある”というメッセージを込め、ありのままの自分を受け入れ、人とつながる大切さを歌っている。
ゆずが新たな挑戦を続ける限り、彼らから目が離せない。これからも、さまざまな音楽を届けてくれるはずだ。