私にとって、「りんごちゃん」とは、ただのおやつではありません。それは、甘酸っぱくて香り高い、特別な思い出の味です。
幼い頃、私はよく母と果物屋に行っていました。色とりどりの果物が並ぶ中、私はいつも真っ先にりんごのコーナーにまっしぐら。真っ赤に輝く「ふじ」に、黄色の「王林」、なんて鮮やかで美しいのでしょう。
母はいつも「一番いいやつを選んでいいよ」と言ってくれました。私は手のひらでりんごを転がし、一番ずっしりとして傷のないものを選びました。家へ帰ると、母はそれを洗って切ってくれました。パリッとした歯ごたえと、ジュワッと広がる果汁。なんておいしいのでしょう。
りんごは、ただのおやつではありませんでした。それは、母とのふれあいの時間でもありました。母は、りんごの皮を剥きながら、私が学校での出来事を聞いてくれました。私は、りんごの甘酸っぱさを味わいながら、母との温かい会話に浸りました。
ある日、私は学校から帰ると、見慣れないりんごがテーブルの上に置かれていました。それは、真っ赤な「紅玉」という品種でした。母は「これは、特別なおりんごよ」と言いました。
紅玉はりんごの中でも酸味が強い品種で、私は最初は少し躊躇しました。しかし、一口食べてみると、その酸味が私を虜にしました。私がしわを寄せているのを見た母は、「酸っぱいのが苦手なら、砂糖をかけて食べてもいいのよ」と言ってくれました。
砂糖をかけた紅玉は、甘酸っぱくて、まるで別の果物のように感じられました。私は夢中になって食べ続け、いつの間にか1個丸ごと平らげていました。母は微笑みながら、「もう1個食べる?」と言ってくれました。
その日から、私は紅玉が大好物になりました。そして、りんごを食べるたびに、いつも母との思い出が蘇ります。母は数年前に他界しましたが、りんごちゃんを通して、今も私は母とのつながりを感じているのです。
りんごちゃん、それは私にとって、ただのおやつではなく、大切な宝物です。