イップスという名の苦難




「イップス」という言葉をご存じでしょうか?スポーツ選手を悩ませることとして知られる、奇妙で厄介な現象です。イップスに悩まされる選手は、それまで無意識にできていた基本的な動作が、あるとき突然できなくなってしまうのです。
私は学生時代に野球部に所属していました。ピッチャーとして活躍していたのですが、ある日突然イップスになってしまいました。それまで真っ直ぐ投げていたボールが、コントロールを失い、あっちへこっちへと暴れだしたのです。
イップスに悩まされている時、私はとてつもないプレッシャーを感じていました。試合でミスをすればチームに迷惑がかかると思い、そのプレッシャーが自分の体を支配していたのです。その結果、ますますボールがコントロールできなくなり、イップスがエスカレートしていく負のスパイラルに陥りました。
イップスを発症すると、選手は自信を失い、不安や恐怖に襲われます。自分の体が言うことを聞かなくなるという恐怖は、計り知れないものです。私は試合に出るのが怖くなり、ピッチャーを辞めざるを得なくなりました。
イップスは、単なる「気が弱い」選手がなるものではありません。一流のアスリートでもイップスに悩まされることはあります。ゴルフのスランプで苦しんだタイガー・ウッズや、バスケットボールのフリースローでイップスに苦しんだチャールズ・バークレーがその例です。
イップスの治療には、さまざまな方法があります。認知行動療法やマインドフルネス、運動療法などが効果的だと言われています。私は心理カウンセラーの助けを借りて、自分自身のプレッシャーに対処する方法を学びました。また、運動療法として、ピッチングフォームを基礎から見直しました。
イップスとの闘いは、長い道のりでした。何度も挫折しそうになりましたが、諦めずにリハビリを続けました。そしてようやく、イップスを克服することができたのです。
私はイップスの苦しみを乗り越えて、再び野球を楽しむことができるようになりました。今は指導者として、イップスに悩んでいる選手をサポートしています。イップスは決して克服できない障害ではありません。忍耐強く、あきらめずに立ち向かえば、必ず乗り越えることができます。