ドドンパ




あれは、私がまだ学生だった頃のことだった。友人たちと遊園地に遊びに行った時のことだ。そこには、日本一速いコースター、「ドドンパ」があった。
その名の通り、ドドンパはとんでもない加速で発車する。シートから体が浮き上がるほどの衝撃だ。全長が180mと短いにもかかわらず、 最高時速は172kmに達するという。
私はスリルライドが大好きだった。当然、ドドンパにも乗りたくなった。しかし、友人たちは皆ビビっている。仕方なく、私は一人で行列に並んだ。
順番が回ってきて、私はシートに固定された。シートベルトがきつめに締められ、発車前のアナウンスが流れる。
「ドドンパ、発車します。皆さん、しっかりとおすわりください。ご気分の悪い方は、すぐに係員にお申し付けください」
「ご気分の悪い方は」というフレーズが、なぜか不安を煽る。
「ドドンパ、発―――」
次の瞬間、私はシートに叩きつけられた。体が後ろに吹き飛ばされるような感覚だ。眼前に景色が猛スピードで過ぎていく。
「ギャー!」
思わず悲鳴を上げてしまった。
時速172kmという速度は凄まじい。体が耐えられる限界ギリギリだ。コースターは垂直に上昇し、また垂直に落下する。私はまるでジェット機に乗っているような気分だった。
やがて、コースターはフィニッシュラインに近づいてきた。減速がはじまる。シートベルトが緩み、体がゆっくりと元の位置に戻る。
「終わった…」
私は放心状態だった。あんなに速い体験は生まれて初めてだ。スリルと興奮が入り混じった、最高に楽しいひとときだった。
友人が列に並んでいるのが見えた。私は駆け寄り、興奮気味にこう言った。
「乗った方がいいね。マジでやばいよ!」
友人は半信半疑だったが、結局全員がドドンパに乗った。結果は言うまでもない。全員が興奮と満足感でいっぱいだった。
あの時以来、私はドドンパに何度も乗った。しかし、あの最初に乗った時の衝撃は忘れられない。まさに、ジェットコースターの王様だ。