伊藤孝雄




あの世からこんにちわ。伊藤孝雄です。

87歳で逝っちゃいましたが、悔いはないっす。役者ってのは死んでも生き続ける仕事ですからね。思いっきり生きたつもりです。

でも、一つだけ心残りがあって。それは、もっと映画に出たかったってこと。映画は、劇場の舞台とはまた違う魅力があるんですよ。あの中では、役柄だけでなく、自分自身も表現できるんです。

特に、若い頃は「主演男優賞を取ってやる!」なんて野望に燃えていました。でも、そううまくはいかなかった。時代劇では脇役や敵役ばかり。しかも、悪役が多いんですよ。でも、それも楽しかったけどね。

でも何年か前、ある映画に出演したんです。その役は、ちょっと影のある老人。セリフも少なかったけど、存在感だけはしっかり出せたと思ってます。その映画はそんなにヒットしなかったけど、自分の中では満足のいく出来だったんです。

だから、もし生まれ変わったら、今度は脇役じゃなくて主演男優を狙ってみようかな。それで、アカデミー賞を取るんですよ。そうしたら、日本の映画界も変わるかもしれないでしょ?

あの世から見守ってるからね。日本の映画界の未来に期待してるよ!