大の里




大の里という名の土地がありまして、ここはとても辺鄙な場所なんだそうで。
最近までそんな土地があるとは知らなかったのですが、ある日友達から「大の里に行ってみない?」と誘われて行ってきました。

大の里は、山の中にひっそりと佇む小さな集落でした。家々が点々と散らばり、その間を細い道が縫うように走っています。
集落の入り口には、立派な木の鳥居が建っていました。鳥居には『大の里』の文字が刻まれており、その下に続けて『ここは神の国なり』と書かれていました。
「神の国」とは大層な言い方ですが、実際この集落には不思議な雰囲気が漂っていました。

集落の中に入ると、人影もまばらで、あたりは静まり返っています。
家々はどれも古びた木造家屋で、軒先には軒灯が吊り下げられていました。
軒灯から漏れる薄暗い光が、静かな集落をさらに幻想的な雰囲気に包み込んでいます。

私たちは集落の中をしばらく歩いていると、大きなお寺にたどり着きました。
お寺の名前は「大の寺」といい、とても立派な建物でした。
お寺の門前には石碑が建っており、それには『大の里の守り神』と書かれていました。
石碑には、この集落が昔は疫病が流行していたが、大の寺のご本尊である大日如来の加護のおかげで疫病が収まったということが記されていました。
大の寺は、この集落にとってとても大切な場所なのだと感じられました。

私たちはそのままお寺の中に入りました。
お寺の中は薄暗く、ひんやりとしていました。
本堂の中央には、大日如来の像が安置されていました。
像は金箔が施されており、とても荘厳な雰囲気を醸し出していました。

私たちはしばらく本堂で手を合わせてお参りしました。
すると、私たちの後ろから「ようこそ、大の里へ」という声が聞こえてきました。
振り返ると、そこには白髪の老人が立っていました。

老人は私たちに、この集落の歴史や風習についていろいろと教えてくれました。
によると、この集落は古くから「神の国」と言われていて、人々は自然を敬い、調和して暮らしてきたのだそうです。
また、この集落には「大の祭り」という伝統的な祭りが残っており、毎年旧暦の8月15日に盛大に行われるのだそうです。

老人の話を聞いていると、この集落には何か特別な力があるような気がしてきました。
それは神聖な力なのか、それとも自然の力なのか。
私にはわかりませんでしたが、この集落に漂う不思議な雰囲気に魅せられました。

私たちは老人に別れを告げ、大の里を後にしました。
集落を離れるとき、私は後ろ髪を引かれる思いでした。
もう一度、この集落を訪れてみたい。そして、この集落に隠された秘密をもう少し知りたい。
そう思いました。