季節のない街




街には季節がありません。四季が訪れません。常に同じ気温、同じ湿度、同じ光です。

人々は季節の移ろいを懐かしんでいます。木の葉が色づき、花が咲き誇り、雪が降り積もる日々を。しかし、街にはそんなものはありません。

街の人々は、季節を知るために工夫をします。公園に木を植え、葉っぱの色が変われば季節が移ったと考えるのです。また、温度計や湿度計を注意深く観察し、少しずつ変化があれば季節が変わったと判断します。

しかし、それはほんの小さな変化です。本当の季節の移ろいとは、もっと大きなものでした。季節が変わるたびに、街の雰囲気もガラリと変わるのです。春には希望が芽生え、夏には活気がみなぎり、秋には物思いにふけり、冬には静寂に包まれます。

街の人々は、季節がないことに寂しさを感じていました。季節の移ろいとともに、自分自身も変化していくことができるのです。春には新しいことに挑戦し、夏には思いっきり遊び、秋には反省し、冬には内省する。季節がなければ、そんな変化はありません。

街に季節を取り戻すことはできないでしょうか。人々が季節の移ろいを感じられる方法はないでしょうか。


一人のおじいさんが、こんな提案をしました。街の真ん中に大きなスクリーンを設置し、四季の映像を流すのです。人々はスクリーンの前で立ち止まり、春の桜の花びらが舞い散る様子や、夏の海辺で人々がはしゃぐ様子、秋の紅葉が燃えるような美しさ、冬の雪が降り積もる静けさを見つめるのです。

このアイデアは街の人々に受け入れられました。スクリーンが設置されると、人々は毎日足を運び、四季の移ろいを感じていました。季節の移ろいとともに、街の雰囲気も変わり、人々の心も変化しました。

街には季節が戻ってきました。それは本当の季節ではありませんでしたが、人々の心の中に季節が刻まれるようになりました。そして、人々は季節の移ろいとともに、自分自身も変化していくことができるようになったのです。

季節のない街が、季節のある街に生まれ変わったのです。