格付けチェック




このテレホン人生相談、生まれも育ちも東京で、何一つ不自由のない家庭に育ったという42歳の女性から。「運命」というものを信じられない人らしい。
「これは本当に相談ごとなのか、ちょっと不安なんですけど」と言う女性に、パーソナリティーの壇蜜さんは、「はい、どうぞ」と穏やかに促す。
「このあいだ、同僚から『格付けチェック』ってテレビ番組を勧められて、初めて見たんです。そうしたら、凄いことに驚いちゃって。だって、私みたいな普通の人が口にしないような高級品を、食べただけでランクづけしてるんですよ。それでいて、芸能人でさえも、その違いがわからないなんて。私は、生まれも育ちも東京で、何一つ不自由のない家庭に育ってきました。だから、『格付けチェック』で紹介されるような、高級食材を食べたことは一度もありません。でも、テレビを観てて、彼らのリアクションには、どこか共感できる部分もあったんです。そう思ったのは、私自身、いろんなことで、ランクづけされているような気がすることがあるからなんです」
女性の言葉が途切れると、壇蜜さんが、少し間を置いた後、こう言った。
「その番組では、一つの食材を三つ並べて、ランクづけしてるわけですよね。ランクが低いものから、中くらいなもの、そして一番高いものと。普通、私たちは、自分でそれを選べるわけじゃないですよね。でも、ある日、突然、ランクが低いものしか選べない状況に立たされたら、どうでしょうか」
女性の返事はなかった。すると、壇蜜さんが、少し強めに続けた。
「もっとわかりやすく言うなら、生まれてからずっと、ランクづけされてきたとしたら、どう思いますか」
壇蜜さんの問いかけに、女性は、しばらく考えてから、こう答えた。
「そんなこと、考えたくないです。でも、何か、そんな風に感じることがあるんです」
「私は、誰もが、ランクづけされていると思います」と壇蜜さんは言い、こう続けた。「それは、生まれたときから、ずっとです。そして、そのランクづけは、私たちの生き方を支配しています。私たちは、自分がランクづけされた範囲の中でしか、生きることができません。それは、子供の頃から、親や先生、友達から、そして、社会全体から、刷り込まれてきたものです」
壇蜜さんの言葉に、女性は真剣に耳を傾けていた。
「私たちは、ランクづけされていることを自覚していません。でも、その影響は、確実にあります。私たちは、自分たちがランクづけされている範囲の中でしか、生きることができません。そして、その範囲の外に出ることを恐れます。なぜなら、それは、自分たちのアイデンティティが脅かされることを意味するからです」
女性は、壇蜜さんの話を聞きながら、何かを必死に考えているようだった。すると、壇蜜さんは、こう言い足した。
「でも、私たちは、そのランクづけを破ることもできます。それは、自分の本当の気持ちに従うことです。自分の心の声に従うことです」
女性の顔が、少し明るくなったような気がした。
「私は、運命というものを信じません。なぜなら、運命とは、誰かが決めたランクづけだからです」壇蜜さんは、そう言って、こう続けた。「私たちは、自分の運命を自分で決めることができます。それは、自分の本当の気持ちに従うことです。自分の心の声に従うことです」
壇蜜さんの言葉は、女性の心に深く響いたようだった。女性は、少しの間、黙り込んでいたが、やがて、こう言った。
「確かに、私は、自分の気持ちを抑えて、周りの人に合わせてばかり生きてきました。でも、これからは、自分の本当の気持ちを大切にしたいと思っています。自分の心の声に従いたいと思っています」
女性の声は、力強くなっていた。壇蜜さんは、女性の言葉を静かに聞いていた。そして、こう言った。
「あなたは、自分の運命を自分で決めることができます。頑張ってください」