「船井電機」の終焉: 一時代を築いた家電メーカーの凋落
日本家電業界の老舗、船井電機がついに破産の憂き目に遭った。かつては「世界のFUNAI」として知られ、低価格帯のテレビで市場を席巻した同社だが、時代の波に翻弄され、経営に行き詰まっていた。
船井電機のルーツは、1951年に創業した船井ミシン商会に遡る。戦後復興の機運が高まる中、ミシンを販売していた同社は、映像機器の市場に着目し、1961年に「船井電機株式会社」へと社名を変更した。
1990年代、船井電機はテレビのOEM製造で頭角を現した。低価格で高性能なテレビを量産し、急速に市場シェアを拡大した。2000年には東証一部上場を果たすなど、絶頂期を迎えた。
しかし、時代の変化は容赦なかった。中国勢の参入により、テレビ市場は激化。低価格競争が激化し、船井電機の収益は徐々に低下していった。加えて、デジタル化の波が家電業界を襲い、船井電機は対応が遅れた。
経営不振が深刻化する中、船井電機はリストラや事業売却を繰り返したが、それでも事態の打開には至らなかった。2023年10月、ついに同社は東京地裁に破産手続き開始を申し立てた。
船井電機の破産は、日本の家電業界における一時代の終わりを告げる出来事である。かつては「日本製」の代名詞だった家電産業も、今では海外勢に押され気味だ。船井電機の凋落は、日本の製造業が直面する課題を象徴している。
同社の製品は、日本の家電製品の技術力と品質の高さを世界に示した。しかし、時代の変化に対応できず、失墜してしまった。船井電機の破産は、私たちの「モノづくり大国」としての自負心を改めて問い掛ける出来事だ。