西園寺さんは家事をしない




「西園寺さんは家事をしない」
そんな噂を耳にした私は、半信半疑ながらも彼女の部屋を訪ねてみた。すると、彼女の部屋はまさに「カオス」という言葉が相応しい有様だった。

埃っぽい床に散乱した衣類、シンクに山積みになった食器、そして部屋の隅には積み上げられた洗濯物。まるで嵐が吹き荒れた後の戦場のような惨状だ。

「西園寺さん、これってまさか…」
「そうよ、あたし家事しないの」
西園寺さんがこともなげに答える。私は驚いて言葉が出なかった。

彼女の部屋の惨状は、彼女の家事に対する姿勢を如実に物語っていた。彼女は「家事は女性がするもの」という考え方を強く持っていて、男性には家事をする義務はないと公言していた。

「家事は私の仕事じゃない。私は仕事に集中したいの」
彼女はそう言い放った。

私は彼女の考え方に同意できなかった。確かに女性が家庭を担うべき時代はあったかもしれない。しかし現代社会では、男女が平等であるべきだし、家事も夫婦で協力して分担すべきだと考えている。

「西園寺さん、家事は男女関係なく、みんなで協力すればいいと思うんです」
「そんなの面倒くさい。それに、あたしが家事をしたら、彼氏が甘えてますますしなくなるでしょ」
西園寺さんの言い分も一理ある。しかし、彼女の考え方はあまりにも極端すぎるように思えた。

私は西園寺さんの部屋を掃除するのを手伝った。掃除をしている間、彼女と家事について語り合った。そして、家事が単なる「義務」ではなく、家族の健康や幸せを守るための大切な「愛」の表現であることに気づいた。

「西園寺さん、家事って実は愛情表現なんです」
私はそう言った。

西園寺さんは私の言葉に少し驚いたようだった。そして、少し考えてからこう言った。

「そうね、確かにそうかもしれない」
西園寺さんの部屋は徐々に片付いていった。そして、その部屋は単なる「住居」ではなく、「愛」に包まれた「我が家」へと生まれ変わった。

その後、西園寺さんは徐々に家事に協力してくれるようになった。完璧ではないかもしれないけれど、彼女の心の中には「家事」に対する新しい認識が芽生えたのだと思う。

西園寺さんは私にこう言った。

「あたし、家事が少し好きになったかも」
私は彼女の笑顔を見て、心の中で小さくガッツポーズをした。

「西園寺さんは家事をしない」

そんな噂は、今では笑い話になっている。
 


 
 
 
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