テレビドラマ『半沢直樹』や大河ドラマ『麒麟がくる』などで知られる、実力派俳優である。しかし、彼のキャリアを語る上で欠かせないのが、2016年公開の映画『シン・ゴジラ』だ。
同作で長谷川が演じたのは、内閣官房副長官・矢口蘭堂。特務機関「巨災対」の責任者として、ゴジラの脅威に対峙する重要な役柄だ。この役を演じたことで、長谷川は一躍時の人となった。しかし、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。
長谷川はもともと、「渋いキャラ」で売っていた。大河ドラマ『真田丸』などでも、気難しい役どころが多かった。しかし、『シン・ゴジラ』の矢口は、それとは正反対のキャラクターだ。優秀で有能、かつ情熱的なリーダーである。この役を演じるとなったとき、長谷川は「自分の殻を破らなければならない」と覚悟したという。
撮影現場では、庵野秀明監督から徹底的に鍛えられた。長谷川は後年、「庵野監督は『お前は俳優として死んだ方がいい』とまで言われた」と振り返っている。その厳しい指導の下、長谷川は役者としての限界を突破していく。そして完成した『シン・ゴジラ』は、日本映画史に残る傑作となった。
『シン・ゴジラ』は、長谷川博己にとって、俳優としてのターニングポイントとなった。同作以降、彼は『旅猫リポート』『記憶にございません!』など、さまざまな作品で主演を務めている。また、2022年には大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で北条時政役を演じ、高い評価を得た。
長谷川は現在、日本を代表する俳優の一人である。しかし、その成功の陰には、『シン・ゴジラ』という作品の存在が欠かせない。同作は、長谷川博己という俳優を「再発見」するきっかけとなったのだ。そして、その再発見は、日本の映画界に新たな息吹を吹き込むこととなった。