「名前はすぐに調べました。SNSなどで検索をして、ハンドルネームが『りりちゃん』という人物だと分かったのですが、それが本名かどうかは分かりませんでした」
こう語るのは、名古屋地裁で開かれた「頂き女子りりちゃん」こと渡邉真衣被告の裁判の傍聴人だ。渡邉被告は、SNS上で「りりちゃん」と名乗り、男性から恋愛感情を悪用して1億円以上をだまし取るなどしたとして、詐欺や恐喝などの罪に問われている。
傍聴席には、傍聴券を求めて徹夜をしたという人も少なくない。裁判所によると、傍聴希望者は約170人に上ったという。中には、渡邉被告の母親の姿もあった。
渡邉被告は、派手な服装で法廷に現れた。髪は金髪に染められ、濃いアイメイクをしていた。傍聴席からは、「きれいですね」という声が漏れた。
検察側の冒頭陳述によると、渡邉被告は2017年から2019年にかけて、3人の男性から現金やブランド品など、総額約1億1千万円をだまし取ったとされる。渡邉被告は男性に「お姫様扱い」をすると約束し、恋愛感情を抱かせた上で、金銭を要求したという。
渡邉被告は、金銭をだまし取った後、男性たちと連絡を絶っていた。そのため、男性たちは被害に遭っていることに気付かなかった。被害に気付いたのは、警察が渡邉被告を逮捕した後のことだった。
渡邉被告は、起訴内容を認めている。しかし、弁護側は「渡邉被告は男性たちと恋愛関係にあった。金銭は贈り物であり、詐欺ではない」と主張している。
裁判は、今後、証人尋問などが行われる予定だ。判決は、10月中に言い渡される見通しだ。
「この裁判は、SNSの危険性について考えさせられるものがあります」と、傍聴した男性は語った。「ネット上で知り合った人と簡単に金銭のやり取りをするのは、危険です」
「SNSでは、自分の素性が簡単に隠せます。そのため、悪意を持った人が近づきやすいのです」と、別の傍聴人は指摘した。SNSを利用する際には、常に相手が誰なのかを疑うことが大切だ。